三栄撚糸は、2011年まで操業していた撚糸工場。
訪問したのは2012年だったので、つまり去年まで操業していたのだ。
敷地の南側は事務所の建物。
ちょっと見た限りでは、撚糸工場のようには見えない。
工場主の方がいたので、話を伺うことができた。三栄撚糸は前橋の絹産業が斜陽化するなかで、独自の営業ルートを開発し、最後まである程度の規模で商売を続けることができたのだという。
今は撚糸機械は片づけてしまって残っていないという。
使っていた撚糸機は「長谷式」というタイプだった。長谷式撚糸機は、送り側のボビン(木管)が横に寝た状態で並んで高速回転するタイプの撚糸機である。ベルトはキャタピラのように水平に回転する。1,000回/m以上の強い撚りをかけるのに適した撚糸機だ。その特徴を生かして最後のころは丹後の機屋と取引したという。いわゆる丹後ちりめんの産地であり、ちりめんは強撚糸の糸を使う製品である。
敷地の西側が駐車場なのでそちらにまわってみると、工場の建屋がまだ残っているのが見えた。
屋根は、ベンチレータを載せた切妻屋根だ。
屋根はもともと2棟あったようだが、東側の建屋は取り壊されて住宅が建っている。そのため、道路にそった東側からは工場の様子をうかがうことはできない。
木箱が積んであるのが見えた。
撚り止めの蒸し加工をするためのせいろではないだろうか。
この駐車場の西側には、佐久間川という用水が流れていて、川の一部が分水されている。この水路は水車をかけた跡だろう。
実は三栄撚糸は戦前は「中村製糸」という名の製糸工場だったという。いま駐車場になっている場所に製糸工場があったのではないか。水車動力を使う時代に創業したとしたら、かなり古くからあった工場だったと思う。
製糸に使う水のタンクが、戦争中に金属の供出に取られてしまったので、製糸工場は廃業。その後は撚糸工場に業種替えしたのだという。
この佐久間川という用水は、前橋の繊維産業と深くかかわっていたのだ。いまでも川に沿って歩くと、どこからか繭を煮る匂いがしてきそうな懐かしい町並みに出会える。
(2012年08月28日訪問)
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ムック – 2020/6/24
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