川原町の小さな寺、大興寺。ここの本堂は前橋藩城主松平家の屋敷を移築したものだといわれている。
入母屋寄棟の建物は、ちょっと見た感じでは田舎の小さな寺の本堂のようだが、内部を見ると外陣部分に柱が多く法事などを行うのには不便そうな作り。
もともと大興寺は姫路市にあったが、松平家が姫路から前橋に転封になったとき、それに従って前橋に移ってきた寺なのだという。松平家の菩提寺というわけではないが、何らかの縁があって屋敷を譲り受けたのだろう。
境内は狭く、本堂が敷地の大部分を占めている。
本堂の前には小さな薬師堂がある。
本堂の左側には庫裏。
墓地のはずれには、無縁仏を集めた場所がある。
中央にある石祠は祠内仏。つまりこれは墓石である。
祠の内部には石像が祀られていて、これはこの墓に眠っている人の姿をかたどったものだといわれる。
この墓地の中を抜ける道は以前は坂道で、このあたりには古墳かと思われる塚があった。
そこには馬頭観音が多く祀られていたので、その塚が取り壊されて馬頭観音がここに集められたのだろう。
またその塚にはかつて「猫観音」と刻まれた文字碑があってとても気になっていたのだが、なぜか猫観音はここには見当たらなかった。どこへやったのか。都市計画もいいが、その土地本来の風習や文化を破壊して平坦でつまらない町に変えるのはどうかと思う。
この墓地では、祠内仏が個人の墓にも見られる。
いまでもお参りできるようになっている祠内仏。
またこの墓地には如意輪観音と思われる石仏も目立つ。
以前この場所にあった塚の上には「虫歯の神様」と言われる場所があった。お参りすると虫歯にならないというものだ。
如意輪観音が頬に手を当てている姿が、歯痛を抑えているように見えることからそのような俗信が生まれたのではないかと思う。
松の木の下に「虫歯の神様」とされる祠があった。
薮が切り払われてずいぶん明るくなっているが、以前は篠竹が茂った薮だったような記憶がある。
この塚にあった「猫観音」。
どういういわれのものかはまったく不明。養蚕の神さまだった可能性もあるが、墓地が整理されたときに行方不明になっており、現在は確認できない。
(2012年08月13日訪問)
福岡県の神社 (アクロス福岡文化誌 6)
単行本 – 2012/5/1
アクロス福岡文化誌編纂委員会 (編集)
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