栗田機業場

広瀬川に面した機業場。

(群馬県前橋市大手町3丁目)

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新井撚糸工場の跡地を見学していたら、近くに(はた)屋さんの工場跡があるというので紹介された。機屋さんとはつまり、機織りの工場である。

工場の名前は分からないが「クリタ」という人がやっていたそうなので「栗田機業場(きじょうじょう)」としておく。

建物の屋根の高さは、普通の人家と変わらないため目立たない。こんな感じの建物は市内の三河町方面にかなりあるので、そうした家々もすべて確認すれば、まだ工場を見つけられるかもしれない。

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工場の手前は車庫になっており、建屋と塀のあいだの細い通路を進むと裏手の広瀬川に出る。

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土地は広瀬川に面しており、水中に石積みが残っていた。もしかすると水車の礎石かもしれない。

この土地建物は売りに出ているとのことで、児童遊園地から近く、川に面した静かな場所なので、宅地としては好条件だと思う。高いんだろうなあ・・・。

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工場に興味を持っていることを伝えると、特別に中を見せてもらえることになった。

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機械類が並んでいるかと期待したが、ほとんどは解体されて処分されてしまったようだ。

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力織機(りきしょっき)に動力を送っていたと思われるプーリーが天井に残っていた。

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これは、(かせ)からボビンに糸を巻き直すための綛繰り機という機械であろう。

糸はツイストドーナッツみたいにひねった形(=綛)で流通しているが、そのままでは絡みやすいので高速に糸を引き出すことはできない。そこで前処理としてボビンに巻き直す。ボビンなら機械にセットして高速に引き出せるからである。

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織機も半分解体されてはいるが、いくつか確認できた。事務机ほどの小さな織機で、フレームが木製の半木(はんもく)織機というタイプ。

ほとんどの部品が取り外されているので確認はできないが、桐生で使われている複雑な模様を織り出す織機ではなく、無地の単純な平織りを織る織機であろう。

前橋や高崎は裏絹の産地だったので、裏絹を織っていたのではないかと想像する。

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建物の内部には床がないばかりか、コンクリも打っておらず土間である。

こんな場所で織物を作っていたんだ・・・。

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これは、糸の綛を束にして結束するための道具。「括造(かつづく)り器」というものだ。製糸工場や撚糸工場で使用するものだと思うが、なぜここにあるのだろう。

改造して種油を搾る道具になっていた。

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木の桶のようなものがあった。

この業界のことはまだ不勉強なので何だかはわからない。もしかすると布精練に使う桶かもしれない。

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これも見馴れない道具。

この界隈にあった釣り竿屋の道具で、竹の竿の継ぐところに糸を巻くためのものだそうだ。

(2015年12月20日訪問)