松田稚蚕共同飼育所

ブロック壁構造の土室電床育飼育所。

(群馬県高崎市吉井町多比良)

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牛伏山南面の廃村をいくつか見たあと、こんどは牛伏山の北東部へ移動した。

多比良という集落で、松田稚蚕共同飼育所を発見。現在は一部分が公民館に利用されている。

越屋根を載せている古いタイプの外観だ。年代的には昭和30年代ではなかろうか。

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近くで見ると、これまで見た飼育所と違う特徴がある。

土室育の古い建物は、高窓が横一列につながっていることが多いが、ここではつながっていない小窓になっている。窓の幅と壁の幅が同じくらいなので、採光機能が弱い。その代わりに越屋根部分がガラス戸になっていて換気と採光を兼ねている。

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近所の人がいたので話を聞いてみると、ここは電床育の飼育所だったとのこと。

もう何十年も前のことなので詳しいことは聞けなかったが、ひとつ不思議な話があった。

貯桑室は道から搬入できたが、飼育室内には階段やリフトがなく、桑を使うときに道側の出入口から運び出していたということだった。記憶違いでなければ、ずいぶん効率の悪い建物だといえるだろう。

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外周には土室育特有の土管。壁は、ブロック積みの壁構造だ。

土室育は一般的には、木造の大壁で、(むろ)は構造体とは無関係の土壁で作られている。しかしこれまでにいくつかブロック積み壁構造の建物も見てきた。たとえば新井稚蚕共同飼育所などがその例だ。そこを訪れた当時、「木造モルタル建築の内部にブロックを積むような改装をしたのではないか」と推測した。だがこの断面を見て、その考えは揺らいでしまった。

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内部を見てみると、室ははがされて跡が残っている。

その幅は土室育の幅だ。このことから、「建築方式がブロック積み壁構造で内部が土室」という工法の飼育所が存在したことが確認できたことになる。新井稚蚕共同飼育所などでの推論はたぶん間違っているのだろう。

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土管の排気管は、基礎の部分に通っている。

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小屋は木造トラス。

桁方向にもトラスが構成されていて、とても丈夫そうな作りだ。

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すぐ近くには湯端温泉という一軒宿があった。

このときは、営業しているのかはっきりしない様子だったが、最近ネットを見ていたら改装されて日帰り入浴可能の形態で営業再開したようなので、そのうちに行ってみようと思う。

(2008年12月28日訪問)