塩という字で、不思議な三階民家を見かけた。
通常、群馬で三階民家といえば養蚕のための空間を最大限確保するために、屋根裏に部屋を作るというケースが多い。ところがこの民家は、2階と同じ平面で3階を作っている。
豪商の隠居屋などでもまれに3階の民家はあるが、そういう雰囲気でもない。
やはり、養蚕農家の一種なのだろうか。
その建物の南側にはかなりまとまった面積の桑畑があった。
面積は30アールくらいはあるだろうか。
雑草などがなく、きれいな畑だ。株の形や高さも揃っていて、勤勉な農家が手塩にかけてきたことが想像できる。
桑は古木で、10~15年くらいは経っているかもしれない。かつての養蚕が全盛だった時代なら、そろそろ植え替えを考える段階の畑だ。
晩秋蚕の飼育が終わって、切ったあとの枝がそのまま残されている。地面に落ちているのは、この枝についていた桑葉だ。
来年の春、この枝から新しい芽が出て春蚕の飼育に使用できる。そのときはこの枝を株の所から切って使うのだ。これが、春と秋の飼育にあわせた桑畑の基本的な使い方だ。
近くで見かけた養蚕農家。
内部は3階だろう。
手前に2階分の下屋が建て増しされている。窓が少ないことから納屋かと思うが、こうした空間で稚蚕を飼育したのかも知れない。稚蚕共同飼育所が運営されていた時代にも、大規模な養蚕農家は、共同飼育所を利用せずに自宅で掃き立てをしていたのだ。
(2008年12月28日訪問)
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海野 聡 (著), いとう良一 (イラスト)
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