4月8日はお釈迦様の誕生日、つまり花まつりである。キリスト教で言えばクリスマスに相当するのだが、いまひとつ花まつりは盛り上りに欠ける。あるとき松井田に住む知人から雲門寺という寺で花まつりをやっていると聞いた。行ったことのない寺だったので、4月8日に行ってみることにした。
寺の入口に来てみると、参道は桑畑の中を抜けてゆく。この桑畑については次のページで紹介するつもりなので、まず寺に詣でよう。
境内は広く、桜やツツジなどの花が咲いていて、きもちがいい。
参道の左右は庭園にしつらえてあって、散歩できるようだ。
一番いい季節に来たのかもしれない。
山門は
白壁が映える。
「鐘楼門」とは、門の2階部分が鐘楼になっている門のことである。「鐘楼門」とは機能の一側面からみた呼び名であり、構造面から言えば「一間一戸楼門」となる。ひとつの建物で2つの機能を持った、節約型の堂宇なのである。それゆえ私は、鐘楼門は純粋な楼門に比べて格式はやや落ちるものととらえている。
鐘楼門には、三間一戸楼門の上部が鐘のある鐘楼門も存在する。しかし、三間の二重門や、五間の門の上部が鐘楼になっている門はあまり記憶にない。
本堂へ参ってみるが、扉はしまっていて、ひと気がなく、どうみても花まつりをやっている様子がない。場所を聞き間違えたのか。
本堂の前には蔵。
本堂の右側には、玄関、庫裡。
花まつりは旧暦や月遅れ、あるいは、GWに合わせてやる寺もあるので、日を間違えたと思って車で帰りかけたら、途中で知人が軽トラでやってきたのとすれ違った。聞けば、今日が花まつりに間違いなく、庫裡の中でやっているとのことだったので、寺に戻った。
玄関を開けて尋ねると、確かに中で花まつりをやっていた。もう少しわかりやすくしてほしいものだ。
まず、本堂のほうにある誕生仏にお参りする。
これが誕生仏。小さな青銅製の仏像が、甘茶が入った鉢(潅仏桶)の中に立っている。お参りする人は、小さなひしゃくで仏像に甘茶をかけるのだ。お釈迦様が生まれたとき、甘露の雨が降ったという伝説にちなんでいる。
仏様の上に載っている屋根は「
花御堂の後ろには、「誕生図」が掛けられていた。
誕生図の構図としては、こんな風に建物の外壁と室内が俯瞰で描かれていて、屋外にはお祝いしている動物たち、建物の敷地内には人間、空からは仏が舞い降りてきているようになっている。無駄と思えるくらいに凝っている建物の構造などが見どころ。また、誕生を祝う動物に、変なのがいないかチェックも欠かせない。この図でいえば、門前に水溜まりみたいなものがあり、そこから魚を頭に乗せた人が浮き上がっている。竜宮城の使いか何かか・・・。
本堂の外陣には、
馬鳴菩薩は養蚕の守り神と言われている。六臂の姿で、頭の位置の右手には糸の小枠、左手には桑の枝、胸の位置の左手には種紙を持っている。胸の位置の右手の持物が謎で、リングが3つ連なった法棒状の謎の用具。これ、養蚕に関係するものなのだろうか?
続いて、内陣にお参り。
須弥壇を近くで見せてもらう。
地方の寺では、この須弥壇の後ろに隠し通路があって、位牌堂への渡り廊下に繋がっているというケースが間々あるので、一応チェック。
裏側には位牌堂の入口はなく、ただ細く薄暗い通路で一周りできるようになっていた。
須弥壇の裏側に祀られているのは、たぶん開山ではないかと思う。
玄関に戻ってきた。この寺の花まつりは、檀家がペットボトルを持参して、寺で大量に作ってある甘茶をいただいて帰るという流れになっていた。私はそれを知らなかったので、特別にお寺からペットボトルをいただけた。
さて、このサイトではこれまで数百の寺々を紹介してきたが、玄関などの建物についてはあまり細かく触れたことがなかった。せっかくなので、この寺で一例を紹介しようと思う。左写真は玄関を内側からみたところ。寺の玄関は、一般家屋の玄関の意味とは異なり、玄関単独で一棟の建物になっている場合が多い。
この寺では、玄関の奥がこのように2室の座敷になっている。用途は、檀家などの接待や、法事の際の待合室といったところで、名称としては「客殿」であろうか。
玄関からみて奥側の部屋。ここも客殿のひと部屋と考えてよいと思うが、奥側に平書院もあるので、この部屋は「書院」としておこう。
書院の先には、廊下があり、廊下の突き当たりは「
ありていに言えば、トイレである。
寺の東司には
書院の裏手は庭園になっていた。
帰りがけに、楼門の前に細い参道があるのに気付いた。
徒歩でしか通れないその細い道を少し歩いてみたら、
「あれ?・・・この寺、高校生のときに来たことがある!」
突然記憶がよみがえってきたのだった。
山門や本堂の記憶はないのに、参道の記憶があるというのはおかしなものだ。
高校生のころ、学校帰りに自転車を遠乗りしてよく寺参りをしていた。たしか季節はアジサイのころで、参道にアジサイが咲いていたような気がする。
徒歩用の参道の本来の入口はこんな感じ。
入口の右に地蔵堂があった。
(2013年04月08日訪問)
ワンダーJAPON (8) (日本で唯一の「異空間」旅行マガジン!)
ムック – 2024/1/26
standards (編集)
伝説のサブカル誌「ワンダーJAPAN」が名前を少しだけ変え、新たに登場した「ワンダーJAPON」、第8号になります。今号の特集は、「高知・徳島 異空間旅行」です!
amazon.co.jp