榛名山は独立した山体で、東西南北すべての斜面に集落がある。集落は、山頂を中心として放射状に形成されているのだが、これから紹介する岡崎は榛名山の北面ではもっとも大きな集落だ。伊香保温泉の北側の登山路でもある。
榛名山麓の集落には台地型と谷すじ型があるが、岡崎は台地型。現在は土地改良で稲作がメインのようだが、以前は桑園が中心だったのではないか。
高原のような広々とした景観の土地で、高崎や前橋の喧騒とも無縁。田舎暮らしを夢見る都会人が思い描く理想的な環境だ。
その岡崎の中心に公民館などが集まっている区画があり、立派なアカマツがシンボルになっている。
この付近は道路や駐車場が広く、土地利用がのびのびしている。
岡崎稚蚕飼育所はその一角にある。
北側から見ると2階建てのように見えるが、1階は半地下になっている。もちろん、2階が飼育室、1階は貯桑室である。
北側の貯桑室の搬入口のあたりも広くて、軽トラなどを乗りつけるのには便利だったろう。
配蚕口は南側で、こちらは特に駐車スペースはない。
配蚕は数時間のうちにいっきに行われるので、配蚕箱を積み込むためのトラックが何台も一度に集まるはずだ。
この路肩に並んだのだろうか。
内部はブロック電床育の室が、3個×2列。小屋は木造トラス。
側面の高窓も3個。大棟のベンチレータも3個。室と一致していてわかりやすい。
ほかに倉庫のような部屋が増設されていた。
北側の近影。
2階は宿直室と挫桑室になっているのだろう。大きな窓のほかに高窓もあり採光はよさそう。
また、このように貯桑室に直接搬入できる造りは、清掃や排水もやりやすかったろうと思う。備蓄している桑が蒸れるのを防ぐために、壁に水をかけたり、桑に布をかぶせて濡らすことがあるが、完全な地下室だと排水ができない。このような半地下方式ならゴミも排水も直接外部に掃き出せばすむ。
貯桑場の窓から中をのぞいてみた。
コンクリ製のしっかりとした階段が見えた。
挫桑室から貯桑場へ降りる階段は、ひどいところになるとハシゴのような急斜になっていて、桑を担いで上り下りするのは大変なところもある。この階段は作業がしやすかっただろう。
リフトのような機械設備はないが、全体的に使いやすそうな飼育所だ。
近くで見かけた養蚕農家。
吾妻川流域の養蚕農家の特徴は、兜造り(かぶとづくり)が多いことだ。これは群馬の他地域とはっきりと違いが体感できる。
兜造りとは、寄棟や入母屋屋根の妻側か平側の屋根を切り上げて2階に採光する屋根の葺き方だ。妻側を切り上げた造りを「妻兜(つまかぶと)」、平側を切り上げた造りを「平兜(ひらかぶと)」と言う。この民家は平兜である。
(2008年05月01日訪問)