山口家。さきほどの一倉家で、近所にもう1軒、土室があると教えてもらい、訪問。
いまはもう養蚕はやっていないが、土室はほぼそのままの形で残されている。なんという奇跡。
お願いして土室を見せてもらうことにした。
土室は、主屋の軒下にむき出しで作られている。
稚蚕は病気に弱いため、稚蚕飼育を行なう空間はすべてホルマリンで消毒する。通常、土室は室内に作られ、扉を開けた外側もまだ室内であり、給餌や除沙(じょさ=食べ残しや糞の除去)の作業は消毒された空間で行われる。
ところがこの土室では、扉の外は屋外で、防疫的には不十分だったはずだ。
このことから想像されるのは、土室が発明された当時は、ウイルスからの防除という発想は少なく、保温、保湿が目的とされたのではないかということだ。
蚕業試験場から農家に土室を作ることが推奨された時期あり、一倉家と同時期に導入したのだという。
内部は蚕座が11段。たぶん、最下段は保湿のために濡れた砂やスポンジなどを置き、飼育に使うのは10段分だと思う。
物置に使われていたので床が作ってあるが、その下には電床が見えていた。
初めは炭火でやり、途中から、電床に切り替えたとのこと。
上部には換気口が2つ。
この構造も教科書通りだ。
換気口は素焼き土管ではなく、木製の煙突になっていた。外側が土壁で、造りだけをみたらすごく古そうに見える。
30年前くらいまで使っていたという。
土室を裏側から見たところ。
これまで、農家を訪れても、敷地内に土室があるかどうかという発想はなかった。
これからは、こんな感じのものがないか、油断なくチェックしなければなるまい。
(2008年05月01日訪問)