いよいよ今日の最終目的地源宗寺へと向かう。
萬年寺からさらに住宅街の中を進むと、やがて谷がせまり周囲は鬱蒼とした山になってくる。そこは市街地から近いとはいえ、一般人が間違えて入ってきてしまうような場所ではない。
人家が途切れると、釣り堀の廃虚(左写真)が現われる。
「さて寺はどこかな」と油断していると、突然道ばたに仁王像が立っている。
もう日が陰っている時間なので、これはかなりびびる。
なにしろ、こんな造形なのだ。
こういう仏像を「コンクリ仏(こんくりぶつ)」という。鉄筋などを骨格にしてモルタルを塗って造りあげられた仏像の1スタイルである。
コンクリ仏については、姉妹サイトの珍寺大道場に造詣が深いので、私が付け加えられるようなことはないのだが、美術のジャンルからすると「アウトサイダーアート」というれっきとしたジャンルに位置づけられる。
中国地方にこつぜんと咲いた仏教美術のあだ花にして、アウトサイダーアートの楽園、それが源宗寺なのである。
仁王像を過ぎると寺への登り口がある。山門などはないので看板がなければただの山道にしか見えない。
入口にある写真付きの伽藍配置図は、配置はかなり大ざっぱであまり役に立たない。
注意したいのは、龍王、聖徳太子、風神が描かれているエリアは、本堂から見て沢の反対側の斜面になるので、普通に参詣すると見落とす可能性があることだ。実際、風神はかなりわかりにくい場所にあった。
さて境内に入ろう。
少し山道を登ったところに鳥居ふうの冠木門がある。冠木門というのは、2本の柱の上に梁を渡しただけの門である。屋根はないのが一般的。
運良く開いていたが、暗くなると参詣できないのかもしれない。よかった。
冠木門を入るとすぐ、「閻魔天」とされる像がある。知らなければ不動明王と判定してしまいそうな像だ。
そこからまた山道が続く。
途中には水掛け地蔵という水子地蔵があった。
本堂に到着。
木造モルタルで民家風の堂。
住職が住んでいるのか、それとも「通い」なのかは不明だが、このときは留守のようだった。
本堂の左には歓喜天堂。
本堂の右には毘沙門天堂。
内部の仏はこんなだ。
よく見ると腰のあたりに銀色のムカデがはい登っている。
コンクリ仏は別にペイントしなければならないという決まりがあるわけではないが、このように彩色されていることが多い。表面をコートする意味もあるのだろう。
それにしても化粧地蔵のような白塗りが怖い。
本堂エリアはすこし平地になっていて、さまざまな像が並んでいる。
これは延命地蔵だろうか。
弘法大師像(左)と、開山像(奥)。
この寺の開山は、稲田源宗坊というお坊さんで、明治39年のことだという。
境内にあるコンクリ仏はみな稲田源宗氏の手作りらしい。コンクリ仏自体は明治時代ということはないと思うので、おそらく戦後の作ではないかと思う。
そして、本堂から少し進むと、この寺のクライマックスである、不動明王の大仏が鎮座している。
座高は4mくらいはあるだろう。
と言っても、下半身は基壇にめり込んでいるような感じで、どこまでが体なのかよくわからない。
手前にすごく大きな足があるが、スケール感はあっていない。おそらく巨大さを強調するためのデフォルメなのだろう。
この大仏の特徴は厚みがないことだ。
後ろからみるとこんな感じ。
両腕はアリ塚みたいなコンクリで支えられている。
鎮守社。
沢の対岸に岩屋がある。稲田源宗がここにたどり着いたときに、3年間こもって修行した洞窟だという。
さらに登っていくと、崖が見えてくる。
伽藍配置図によれば摩尼宮とのこと。
摩尼宮の上には修行大師像らしきものが見えた。
修行大師の背後の岩は、滝のように赤く塗られている。その上にも何やら仏像が安置されているのだが、暗くてよくわからなかった。
青い色からして、不動明王だろうと思うのだが。
続いて、沢の反対側の斜面へ。
道はあるのだが、工事中で「こっちへ行っていいのか?」というようなハシゴを降りていかなければならなかった。
反対側斜面にある聖徳太子稚児像。
龍王1。
龍は2体いるのだが、なぜか片方は彩色されていなかった。
龍王2。
誰か乗ってる。髪形の感じからすると菩薩っぽい。妙見菩薩ということにしておく。
風神。
牛鬼のような顔つき。左肩に載せているのは、半鐘だ。
境内にはほかに粟島明神(手前)、大黒天堂(奥)。
いまさら言うまでもないが、この寺は「珍寺」である。訪れる人々の目的もほとんどは怖いもの見たさだろうと思う。
だがそれでいいのではないかと思う。
子供のころの「あそこのお寺はの仏像は怖かった」というような体験はオトナになってからではできない貴重な体験なのだ。
帰りかけたころ、
実は、今日は東広島から呉までの移動の途中で、地図で見つけた国民宿舎・音戸ロッジに電話予約を済ませてあるので、宿の心配はないのだ。
(2002年08月28日訪問)
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