井桁屋

築80年になる百貨店建築。空中庭園がある。

(愛知県西尾市幸町)

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井桁屋。市内で見かけたデパートの廃虚。ネオルネッサンス様式を基調とした古典復古様式。竣工は 1924 年で戦時中に閉店したという。大正~戦前に流行した古典復古様式の建物は、金融機関や商工会議所などに使われて今でも残っているものが多いが、デパートで残っているものは珍しいと思う。

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80 年前の西尾市がどんな町だったか想像はできないが、1~2階の商家建築や土蔵などが並んでいたはずであり、井桁屋の3階+塔屋の高さは相当に目立ったであろう。

昔の店舗は建物自体が芸術的に作られていたのだ。地方に世界の先端の文化を持ってこようとした当時の商人の意気込みがひしひしと伝わってくる。大量生産品をいっぱいに並べるているだけで、精神的豊かさがまったく感じられない薄っぺらな現代の商業建築とは全く志が違うのだ。

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裏からみたところ。

後ろにつき出した部分はスキップフロア(中2階のような部屋)か、階段室のようである。

3階部分には円柱形のバルコニーのような場所がある。内部がどうなっているのか見てみたい。近くの花火屋さんで鍵を貸してくれて中を見学できるようだ。

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屋上に樹が生えているのは廃虚になったからではなく空中庭園が作られているからだという。おそらく現存する日本最古の空中庭園ではないだろうか。その点において、とりあえず市指定の有形文化財に指定さてれてもいい物件だと思う。

(2001年11月24日訪問)