湧水巡りを終えて帰路につこうとしたとき、友人が「このあたりでむかし変な三重塔を見た記憶があるけどもう一度行ってみたい」と言い出した。実は私も今回の湧水巡りのついでに寄りたいと思っていたのだが、友人もまったく同じことを考えていたようだ。やはり竹馬の友というのはいいものだ。
むかし行ったことがあるが、その後その場所へ行こうとしてもどうしても行けない、という場所がある。この寺は友人にとっても私にとってもそういう特別な場所だったのである。この付近はずっと平地が続いているばかりで地形上の目印というものがない。だから地図を見ても「この寺だ」とはすぐに特定できないのだ。地図を見ながらかなり広い範囲を廻って、やっと東雲寺にたどり着くことができた。
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この寺に来るのはおそらくこれで3回目だと思うのだが、なぜかいずれも夕方から夜にかけての時間だった。そういう因縁の寺なのだろう。
写真を撮るにはかなり無茶な時間帯であったが、ここで記録しなければ次に来るのはまた十年後になりそうだったので無理やり参詣することにした。
周囲は畑だ。かつては桑畑が一面に広がる中にある寺だったのだろう。
山門は四脚門。 |
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山門を入ると、百観音ミニ霊場があり、その先になんとも形容に窮する三重塔がある。
1層は鐘楼で、その屋根の上に2層3層を載せてある。
しかも鉄製。2層3層の花頭窓は単なる模様。仏教建築というよりも遊園地の遊具のような印象の物件である。
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私の知る限り群馬県内に
(石造塔、ストゥーパ類を除く)層塔形式の仏塔は十数件あるのだが、その数は鉄造の塔や公園の塔なども数えてのことである。
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本堂はこんな感じ。
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庫裏はこんな感じ。
何しろもう日が暮れていて、肉眼ではほとんど見えず、デジカメの画像を増感して、やっとなんだかわかるという状況だった。 |

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境内の東側には納屋。
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境内の西側には阿伽井屋があった。
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こうして新田荘の湧水巡りは終わった。総括するならばショッキングとしか言いようがない。重殿水源を代表とする海抜
60 m 付近の湧水は壊滅状態であり、55 m 付近も危機的な状況にある。今年は空梅雨だったので特に水が少なかったとも考えられるが、近年の東毛地方の工業発展も地下水の水位の低下には無関係とは言えないだろう。10
年後にまた訪れてみるつもりだが、その時のことを想像すると明るい気持ちにはなれないのだった。 |