

新田町の湧水の中ではいちばん樹木が豊かな場所にある。右側に見える林は農家の屋敷林である。湧水はその屋敷林のすぐ外側にあった。

この湧水も水位は下がっているものの、まだ枯れてはいない。
水質はまずますきれいで鯉が飼われていた。水面を観察しているとカワセミが飛んできてすぐそばの石垣に止まった。我々がいるのに気付きすぐに飛び去ったが、この屋敷林も合わせて小さな里山の環境が残っているのだ。

石垣の一部からは水が湧出しているのがはっきりと確認できる。
たまたま屋敷林を所有する農家の方がいたので話を聞くことができた。
湧水の水量にはもともと変動があって、春から夏には多くなり、冬から春までの間は少なくなるという。だが湧出量が年々減っているのは確かで心配しているという。水が減った原因のひとつは、集落の北を流れる新田堀(地図で市野井のあたりを斜めに流れている用水)が3面コンクリートのU字溝になったことが関係しているのではないかということだった。

伏流水がそのような近距離の川の影響で枯れるとはにわかには信じがたいが、もし新田町がこれらの湧水を未来に残して行こうと考えるなら、新田堀の改修と湧水量の関係は調査するべきであろう。
このお宅の庭には湧水から流れ出た小川が流れる庭が造られていて、かつては朝起きるとこの小川の水で顔を洗ったのだと懐かしそうに話してくれた。

屋敷林の中に入ると小さな祠があった。
竹林に水平に西日が差し込んで、黒い闇と金色のストライプが幻惑的な光景を作り出していた。

前回の訪問時には、ポンプ小屋があった。
現在はこの基礎だけが残っている。すでに大型のポンプでくみ出すほどの水がないのはあきらかである。

前回のときには、ポンプ小屋と池に覆いかぶさるように伸びた樹木で水面は確認しづらい状況であった。
(2004年08月31日訪問)