
豊橋市まで戻ってきた。時刻は4時を廻っている。友人はもうぐっすりと寝ている。
今日はもうどうしても立ち寄りたい場所はなかったのだが、旅の初日で見る予定だった2ヶ寺に寄ってみることにした。普門寺は初日に山門前まで来ていたので、道に迷うこともなくすんなりと到着する。
山門は寄棟造の八脚門の仁王門である。初日にはここまで来たのだが、暗くなっていたので引き返したのだ。

普門寺は奈良時代に創建されたと伝える古刹だ。実際に所蔵する仏像は平安中期のものなので、かなり古い寺と言っていいだろう。寺はもとは山上(左図)にあったという。

山門を入ってすぐ左側に十王堂。十王堂が多いのも三河地方の特徴のように思う。
その裏手にはRC造の文化財収納庫があった。

しばらく進むと一間一戸の鐘楼門が見えてくる。

境内に入ると正面が庫裏になっている。庫裏の右には玄関(左写真)、その右に本堂。
本堂は方丈のような造りであまり本堂らしくない。山上伽藍の観音堂が本堂という位置づけなのだろう。
本堂の中は護符などの売り場になっていて、本尊に礼拝するという雰囲気ではなかった。

ところで、寺の境内には色々なタイプがある。
境内で子供が遊んだり、住民が通り抜けたりするような開放的な寺もあれば、この寺のように塀や長屋門や門扉のある山門で閉鎖的な空間を造っている場合もある。どちらが良いとか悪いとかというものではないのだが、閉鎖的な境内を持つ寺では、気持ちまで閉鎖的にならないようにしてもらいたいものだ。

と言うのも、この寺では境内に入ると、飼われているシェパードが参拝客に向かって怒り狂ったように吠え続けていたし、寺の住人も「なんで人が入ってきたんだろう」という疑うような目つきで庫裏から様子をうかがっていた。住職がそういう気持ちだから犬も参拝客に吠えるのだろうと思う。

境内の奥には、山上伽藍があって水盤舎、観音堂(左写真)、大師堂、弁天堂がある。
江戸後期の建物だと思うが、最近修復されて茶色いペンキが塗られていた。

大師堂(写真中央)と弁天堂(写真中央奥)。
本来であれば、私の好きな伽藍配置なのだが、境内全体に険悪な空気が流れているようで、長居はしたくないというような寺であった。
地域としては初日に訪れた正宗寺とも似ており、いずれも険悪な寺だったので、この地方の特徴なのであろうか。
(2001年10月08日訪問)