鶴林寺

国宝の本堂には折衷様式の天竺様の意匠が見られる。

(兵庫県加古川市加古川町北在家)

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鶴林寺は加古川市きっての名刹。国宝、重文がごろごろしており建物も多く、播磨の法隆寺とも呼ばれている。寺伝では鶴林寺は聖徳太子が立てさせた寺が始まりと言われていて、太子信仰の寺として栄えてきたという歴史を持つ。

周囲は鶴林寺公園となっていて、東側の公園にはSLが展示されている。鶴林寺の東側の県道は旧高砂線の廃線跡であり、それと関係するのかもしれない。

左写真は伽藍配置図。

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裏門(北側)の方に車がたくさん停めてあったので、最初そちらから入ろうとしたが、裏門は閉まっていた。そこに停めてあった車はどうやら塔頭で行われる茶会の出席者の車のようだ。

南側へまわると立派な無料駐車場があった。新西国札所は駐車場がただのところが多くてうれしい。それに比べて西国札所ときたら‥‥ぶつぶつ。

山門は三間一戸楼門で県指定文化財。

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境内の入場料は300円。一見の観光客にとっては安い金額だが、街中にあるだけに地元の人の参詣のことを考えると、入場料はどうかと思う。 

山門を入ると左側には経蔵(写真)や行者堂(写真の鳥居の奥の堂)がある。

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行者堂の近影。

前半分は春日造り、後ろは入母屋造という珍しい構造をしている。造りとしては神社である。

縋破風の傾斜も緩やかで、軽やかな印象の堂だ。室町時代初期の建物で国重文に指定されている。

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行者堂の周囲は新西国三十三番のミニ霊場がある。

このへんを訪れる観光客はほとんどいない。

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三重塔。県指定文化財。2層、3層の高欄に平三斗(天秤ばかりのように見える意匠)があり、ごてごてした印象を与える。

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新薬師堂。戸は開け放たれていて自由に内部に入ることができる。

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その内部。薬師如来と脇侍(日光・月光菩薩)や四天王などが祀られている。

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常行堂。国重文。

常行堂は正確には常行三昧堂(じょうぎょうざんまいどう)という。常行三昧とは阿弥陀仏の周囲を歩き続けながら念仏を唱えるという天台宗の修行である。つまりその修行を行なうための専門の堂ということになる。かなり格式のある天台寺院にしか見ることができない。

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講堂。古い建物ではない。現在では写経会の会場などに使われているようである。講堂の機能からみたら正しい使われ方だ。

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本堂。室町初期の建築で国宝。鳥が翼をひろげたような屋根の反りが美しい。

和様、唐様、天竺様の折衷様式の代表的な建築と言われている。

参道のパノラマ

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国宝というわりには敷居が低くて、自由に外陣に立ち入ることができるのが嬉しい。

虹梁に張り出した肘木の形式などに天竺様(大仏様)の特徴を見ることができる。(左写真)

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太子堂。これは誰が見ても国宝とわかる建物だ。(左写真)平安後期の建物という。元々はこの堂が方三間の常行三昧堂として建てられたが、後に聖徳太子像が安置され太子堂と呼ばれるようになった。

いにしえの大工はどうしてこうまで根本的に美しい建物を建てることができたのだろと、ため息がでるほど軽やかな美しい堂である。

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鐘楼(手前)と、観音堂(奥)。

鐘楼は国重文。

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護摩堂。国重文。

鶴林寺本体の堂としては、他に、弁天堂、四脚門、地蔵堂、宝物館(拝観料は別)がある。

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本堂の裏手には3つの塔頭(子院?)がある。だが、鶴林寺自体には寺務所や庫裏がないので、これらの寺が実質的には鶴林寺を管理しているのではないかと思われる。

これは西側にある浄心院。(左写真)

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中央にある宝生院。

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東側にある真光院。

とにかく目の保養になる寺であった。

(2001年04月29日訪問)