お砂踏み霊場とは?

今のように高速道路が発達し車で山の上の寺まで上れるようになった時代でも、実際に四国八十八ヶ所の寺々を巡礼するのは容易なことではない。現代の交通機関を駆使しても15日程度はかかるのではあるまいか。普通に考えても現代人がこれだけの時間を作り出すのは容易ではなかろう。そこで本当の四国巡礼に行けない人々が疑似的に四国巡礼を行なえるように、近郷近在の寺々を四国霊場に見立てた「写し霊場」や、一つの寺の敷地内に八十八ヶ所の観音を集めたミニ霊場が作られることとなる。

特に後者のミニ霊場の場合、お砂踏みという手法がとられることが多い。お砂踏みとは実際の霊場の砂を持ち帰り、ミニ霊場の順路の足元の地中に埋めておくという方法である。甲子園の砂のお寺版みたいなものである。お砂踏み霊場はこのように参拝者が埋めた砂の上をうまく通過するように通路が作られていたり、踏むべき場所の目印のためプレートなどが置かれていたりする。

お砂踏み霊場は一番札所から結願札所まで順番に参詣できるように、参詣者の移動ルートがはっきりとしていおり、柵や生垣で通路が形成されていることも多い。野外に作られた空間とは言え巡礼空間として興味深い物件であるといえよう。

左写真は秦野市金蔵院の八十八ヶ所お砂踏み霊場。

石碑の前にあるプレートの下に砂が入れてあるものと思われる。