富士塚とは?

富士山を信仰の対象としている富士浅間信仰という信仰がある。この信仰では富士山に登山することが修業にあたるのだが、江戸時代にはなかなか実際の登山はできなかった。そこで地元に富士山のミニチュアを作り、そこに登ることで富士登山を疑似的に体験する施設が作られた。それが富士塚である。

富士塚は大きいもので高さ十m程度で児童公園の築山ほどの大きさであるが、富士山から運ばれた溶岩が積み上げられ、本物の富士山同様の登山ルートと要所要所の信仰対象が再現されている。

以下の図は、東京都渋谷区鳩の森八幡境内に現存する富士塚の見取り図である。

登頂ルートに沿ってさまざまな信仰対象が配置されているのがわかると思う。ふもとには富士五湖や胎内窟が再現されている富士塚もある。ルートの途中には「○合目」という石柱が立てられていたりする。なにせミニチュアであるから「一合目」分が高度差1mくらいだったりするのだが‥‥。

富士塚は小さな築山ながら、登山道と下山道が別々に設けられていて一方通行に参詣できるものも多い。この点で巡礼空間としての要素は充分に持っているといえる。

また、富士塚以外に、(木曽の)御嶽山をまつった塚や成田山をまつった塚を見かけることもある。これらの呼称は不明であるが、このカテゴリで一緒に紹介していこうと思う。