パアメータン寺院

サルウィン川に突き出た小山の上にある寺。

(ミャンマーカレン州パアン)

パアン市は、Asian Highway 1(通称、AH1)という国道と、大河サルウィン川の交差点に発達した交通の要衝である。想像するに、かつてはパアン市街からサルウィン川西岸のミャインカレイ村まで渡し舟で通行していたと思われるが、現在は市街から5kmほど下流に鉄橋が架けられていて、AH1号線はその橋まで大きく南へ迂回している。往復で10kmにもなる迂回はけっこう面倒だと思うのだが、どうやらその辺りが川幅が狭いので架橋しやすかったのだろう。

その迂回路区間にあるパアメータン寺院を紹介しよう。寺はサルウィン川に突き出した小山の上に建っている。その山の名前がパアメータンで、「パアメータン・ポーチャウン寺」というのが正式らしい。「パアメー山の上にある寺」という意味である。

この日は朝から少し晴れ間があったので、ホテルから歩いて寺へと向かった。

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パアメー山の名前の意味は「黒いカエル」。「パア」がカエルの意味である。カレンではカエルは神聖な動物とされている。そもそも州都「パアン」の地名も「カエルが吐き出す」というような意味なのである。

山門にはカエルとヘビの像があしらわれている。

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ミャンマーの民話ではカエルは強い動物とされているようだ。ヘビに対しては毒を吐いて倒し、ライオンとの吠え比べでは水に潜って吠え声をかわして勝利を収める。

この山門の造形も、カエルがヘビを追い払っているという場面ではないかと思う。

日本の「三すくみ」では、ヘビはカエルを食べ、カエルはナメクジを食べ、ナメクジはヘビを溶かすとなっていて、ヘビとカエルの立場は逆だ。

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パアン市の寺ではときどき、このようにカエルの像が祀られているのを見ることができる。

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山門で寝ている人がいた。

こういうゆるさがミャンマーのお寺の好きなところだ。

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山門を入るとすぐにコンクリ土間の階段になっているので、山門で履物を脱いで階段を登る。ミャンマーの寺では、参詣するときには裸足にならなければならない。

どこで履物を脱ぐかはそのとき次第だが、「脱げ」という看板や下駄箱があればそこで、ない場合はコンクリ土間や回廊の屋根が始まる場所から脱ぐのがよいだろう。

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しばらく登ると講堂があり、その前には仏陀が祀られている。

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講堂の様子。

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小さなパゴダと、カエルの像。

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コンクリが黒ずんでいるので、まさに「黒いカエルの山」の名前どおりになっている。

それとも黒いペンキが塗ってあるのかな。

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モザイクミラーが張られお堂。

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こちらには3体の仏さまがいる。

ミャンマーのお寺で、なかなか理解できないのが、こうしたクローンのような仏が並んでいるところだ。日本の九体仏などとでは印相が違ったりするのだが、ミャンマーでは印相も同じだ。触地印が多い。

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その横には行者を祀った堂がある。

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トラ使いのおじさん。

ときどきトラ使いを見かけるけれど、同一人物なんだろうか。

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玉をかざしている白い人。

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杖をついたおじいさん。

どれも誰なのかさっぱりわからない。

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赤い布をかぶった神様。ナッの神様か。

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尾根に沿ってけっこう建物がある。

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木魚。

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鐘つき柱。

たいてい参詣者が自由に撞いてよい。

仏・法・僧に帰依しますと3回撞けばよい。

カレンスタイルの撞きかたというのもあって、その場合は撞木で地面を撞いてから鐘を撞くという動作を3回繰り返す。パアンの寺巡りならば、カレンスタイルで撞くのがよいかも知れない。

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山頂にはパゴダがある。

大きなパゴダの周りに8つの小さなパゴダがある。こういう場合、8つのパゴダは8種類の曜日に対応しているので、自分の曜日の守り本尊に祈りをささげればよい。

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山頂のパゴダからはサルウィン川を見渡せる。

さっきまで晴れていたのに、急に雲行きが怪しくなってきた。

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サルウィン川の下流を見ると、数キロ先はもう激しく雨が降っている。

パアン市の天候はだいたい、南西のほうから変化してくる。どうやらホテルに戻る前にひと雨来そうだ。

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沐浴をするお坊さん。

水が濁っているのは、川の水を汲み上げているからではないかと思う。

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沐浴場はもう一箇所あったが、こちらは多少きれいなので、井戸水か雨水を溜めたものなのだろう。

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小さな子供の修行僧。

ミャンマーの仏教徒は、少なくとも一度は出家して寺に入らなければならない。小さな子供のうちに出家することも多い。

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境内をうろちょろしていたら、寺の人が「こっちに来なさい」と誘ってくれたのでついてゆく。

言葉は通じないのだが、どうも歓迎してくれるようだ。

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連れてゆかれたのは食堂(じきどう)

ミャンマーの寺では、参拝者は無料で食事をすることができるのだ。どうやらご飯をご馳走してくれるようだ。

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厨房の様子。

寺はまったくの女人禁制というわけでもない。以前見た僧院でも厨房は女達が働いていた。

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「こっちよ、このテーブルに座って」

食べ終わってくつろいでいた人たちが立ち退かされ、私たちのためのテーブルが準備される。

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メニューはカレー風味の炒め物や煮物が中心。とても沢山のおかずがある。

「どんどん食べなさい」と言われ、ご飯を盛ってくれる。モノによっては青トウガラシが入っていて、痛さしか感じられない辛いおかずもあるので、はじめは少し取って味見するのがよい。

右手前の黄色いラッキョウのようなものは、ジャックフルーツという果物の実。甘酸っぱくて美味しいが、酵素が強くてすぐに口の中が痒くなる。

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食べ終わったら、食事に感謝して寄進をしてもよい。相場などはないので、自分の金銭感覚で払えばよいだろう。もちろん寄進しなかったからと言って、白い目で見られるということもない。

床板の一部が外せるようになっていて、ゴミを掃き込んでいた。合理的な造りだが、床下で食事くずがどうなるのか気掛かりだ。

(2014年06月12日訪問)