萬盛座

神流町の市街に残る劇場建築。

(群馬県神流町万場)

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神流川(かんながわ)の上流域(鬼石町、万場町、上野村)は、対岸の埼玉県側も含めて、いずれすべての字、すべての民家を見尽くすくらいに細かく見て回りたいと思っている地域だが、現在のところまだ手付かずに近い状態である。

あるとき、ドライブで万場町を通過したとき、左写真のような風景を見つけ、思わずクルマを止めた。気がつかれたであろうか、古い映画館である。

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テレビが普及する以前には、町々に芝居小屋や映画館があって娯楽となっていた。そうした劇場は、市部だけではなく、周辺の小さな町村にも存在していた。

私は以前住んでいた徳島県で、広範囲に映画館跡を探し回ったことがあって、田舎の小さな町での劇場にはかなり敏感な体質になっている。

だが群馬県では、以前に高田公会堂を見つけたくらいで、あまり成果を挙げていない状態だったのだが、ようやくひとつ発見することができた。

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教会の尖塔のようなオーナメント。

扁額には「萬盛座」と書いてある。

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現在は自動車整備工場として使われているようだ。

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通りに面した側には二階がある。手すりの様子から、映写室のためだけの造りではなく、二階席があったように見える。

だとすれば、この劇場はもともとは映画館ではなく、芝居小屋として建てられた可能性がある。

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舞台側。

舞台は取り払われているが、太い梁があるところまでが舞台だったのではないかと思う。

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この太い梁に舞台幕がつり下げられていたのだろう。

小屋組みは木造トラスのほかに、火打ち梁。木造の大空間はいまも健在だった。

(2012年11月22日訪問)