琴平神社・本殿まで

社殿が多く、神像が目立つ神仏習合の神社。

(群馬県高崎市新後閑町)

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高崎駅から南へ 1 km ほどいったところにある神社。

旧国道17号線に面して南向きに参道の入口があるが、付近は17号線バイパス、新幹線、城南大橋の取り付け道路の建設で道が変わってしまっているため、ちょっとアクセスしにくい一角になってしまっている。

だが、そのあまり目立たない神社が、実はかなり楽しめるいわゆる珍寺的な神社なのである。

参道には別当寺の荘厳寺があるが、後で紹介するとして、まず神社のほうへ歩を進めよう。

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境内に入るとまずあるのが八脚門。

「八脚門」は構造上の呼び方で、門の用途や祭神によって別な名前で呼ぶこともできる。

神社の八脚門には随身(ずいじん)が祀られることが多く、その場合は「随身門」と呼ぶこともできる。ところがこの神社の場合、表側に随身、裏側に金剛力士という神仏習合の門になっている。「随身仁王門」とでも呼べばよいか。

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一つの門に随身と仁王が同居というのは珍しいとは思う。ほかでも見たことがあるような気もするのだが、どこだとはすぐに思い出せない・・・。

また、神社に仁王門、寺に随身門という、単純に逆の組み合わせの門も探せばありそうだ。あ、比較的最近紹介した上後閑の榛名神社もそうだったか。

こちらは右大臣。

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こちらが左大臣。

この2体が八脚門の手前側に祀られている。

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裏側に回ると、右側に阿形像。

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左側に吽形像がある。

まさに神仏習合を体現した門だ。

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仁王門を過ぎると、神楽殿があるのだが、なんと参道に背中を向けている。

想像するに、この八脚門はもともとは国道17号バイパスの場所に建っていたのを移築したのではないだろうか。

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神楽殿を表側からみたところ。

神楽殿の手前にある壁状のものはいったい何なのだろう。ちょっと考えてみたが想像ができない。激しく気になる。

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参道は途中でL字に曲がっており、突き当たりには天神社がある。

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その内部には天神様の神像が安置されていた。

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折れ曲がった先には、ケヤキの巨木が参道をふさぐように立っている。

その先には、小山があり参上に社殿が建っている。

この小山、自然の山にしては不自然だ。もとは古墳だったのではなかろうか。もし円墳や方墳だとしたら、かなり立派な古墳だったことだろう。

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石段の手前には、こま犬のごとく、左右二体の天狗像がある。

神社の名前の「琴平」とは「金刀比羅(ことひら)」の異字であり、「金毘羅(こんぴら)」と同じコトバである。その総本社は香川県の金毘羅神社だ。金比羅さまは海上交通の守り神とされ、漁師などの信仰が厚い。天狗とはちょっと結びつきそうにないのだが、なぜか香川の金毘羅宮にも天狗の面などが見られる。

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石段右側には大天狗。

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石段左側には烏天狗。

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烏天狗の前には水盤舎がある。

水盤舎の左手は社務所。

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水盤舎の裏手には信徒会館の「琴平会館」。

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さて、いよいよ本殿にお参りすることにする。

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拝殿は銅板葺き入母屋造。

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拝殿の左側には方一間の大黒社。

内部には石造の大黒天が見えている。

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本殿は切妻平入りの建物で、石の間で拝殿とつながっている。もしかしたら本殿ではなく本殿の覆屋かもしれない。

本殿のすぐ後ろにも巨大なケヤキ。ただし、幹は落雷でウロになっているため、枝は切り落とされている。

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油断ならないのが、本殿の裏側にも何やら参拝箇所があることだ。

こうした構造の神社、何度か見たような気がする。これまでに紹介した中ではないが、たとえば兵庫県の清荒神は本殿の裏側に参詣装置があったりする。清荒神もここと同じく、真言宗との神仏習合なので関連性でもあればおもしろそうだ。背面からの参詣については、これから注意して見ていこうと思う。

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社殿の南側には絵馬殿と休憩所がある。

この場所は、単なる休憩所ではなく、小山から舞台状にせり出していて、物見台のようになっている。このような場所を本サイトでは「観月殿(かんげつでん)」と呼ぶ。月見をするために作られた建造物や場所のことである。ただし現実に月見をするかどうかでは問題ではなく「月見をしそうな建物」であればよい。山の上の神社などにときどき見られるので、今後も何度か紹介することになると思う。最も有名なものは、滋賀の三井寺にある観月舞台であろう。

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絵馬殿とは、絵馬を飾る専用の社殿である。

本家の香川の金毘羅宮にも有名な絵馬殿がある。

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絵馬にも天狗のモチーフが目立つ。上の絵馬は日付がないが戦前のもの。

面白いのは、下段左寄りにある航空機の絵馬。昭和46年のもので「大願成就」のタイトルがある。海外進出の願掛けでもしたのだろうか。

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拝殿にも絵馬がある。新しそうに見えるが、大正5年とある。奉納した人の子孫が修復したものかもしれない。

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ここまでで、この神社の参詣の半分が終わった。

この神社の最大のお楽しみはこれからなのである。

(2013年01月13日訪問)