多比良のベーハ小屋群

納屋などと隣接して建てらている。

(群馬県高崎市吉井町多比良)

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多比良(たいら)という集落でいくつかベーハ小屋を見かけた。

今回は、稚蚕飼育所を探す旅なので、遠くから写真を撮るだけにしておく。

ここではベーハ小屋が母屋や納屋などと隣接して建てられている。現在でも倉庫などの用途で使われているのだろう。保存状態は良好だ。よく見ると2階の階高にガラス窓がある。居室として使われたことがあるのかも知れない。

➡ 場所

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これは多比良で見かけた別のベーハ小屋。

➡ 場所

上写真と同じような外観で、おそらく大阪式。ここで「大阪式」について触れておこう。

『黄色種たばこ耕作法』(富民社)という本によれば、黄色種の乾燥室(ベーハ小屋)のタイプには、大阪式、広島式、折衷式があるとされている。

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■ 広島式の概念図

乾燥室の天井に開け閉め可能な天窓があり、熱気を天井裏に排気する。その後、天井裏に上がった熱気の排出は、おそらく煙出し櫓か、妻の煙出しから行われたのだろう。広島式には越屋根がないとされているからである。

現時点で、当サイトでは広島式と思われる明確な遺構は確認できていない。

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■ 大阪式の概念図

越屋根に突き上げ戸があり、突き上げ戸の開け閉めで熱気の排出を行う。乾燥室内は越し屋根まで吹き抜けており、越屋根の内部が常に見えている。

次に述べる折衷式に比べて構造がシンプルなため、その分コスト安だと考えられる。

当サイトでこれまで見てきたベーハ小屋はこのタイプが最も多い。

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■ 折衷式の概念図

乾燥室内の天井に開閉可能な天窓があり、熱気を越屋根内に排出する。したがって、越屋根の開口が非可動(吹き放ち、もしくは、ガラリ板など)の場合は折衷式とみなせる。

また、「越屋根の妻側に突き上げ戸(観察窓?)があるのは折衷式」という証言があるが、大阪式の場合でも妻側に大きな突き上げ戸があるものが多いようだ。

越屋根の妻側開口部が突き上げ土ならば大阪式、吹き放ちやガラリ板ならば折衷式と判断可能だ。しかし実際は雨仕舞いのために開口部鉄板などで塞ぐ改修がされた物件が多く、外観だけでは判断しにくい。

もし越屋根が突き上げ戸で、かつ、天窓があるベーハ小屋が存在するなら、それは折衷式と見なすべきだ。折衷式の本質は、越屋根+天井だからである。もっとも天井の有無は内部に立ち入らなければ確認できないので、外観のみの観察では大阪式と判定されてしまうのもやむを得ないだろう。

(2008年12月28日訪問)