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富岡製糸場は、明治5年に操業を始めた官営の製糸工場だ。散髪脱刀令が布告されたのが明治4年だから、ちょんまげに帯刀の武士が歩いている時代に、上州の片田舎に最新鋭の工場を建設したことになる。その当時の人々にとってはすべてが驚きだっただろう。
初期の器械製糸は手繰り方式の繰糸に毛の生えた程度のものだったが、動力を用いたり、作業分担しながら生産するという点ですでに工業と言えるものだった。製品の出荷は必ずしも順調ではなかったとも言われているが、各地に出来始めていた製糸工場の模範となった重要な工場だった。明治26年には模範工場としての役目を終えて民間に払い下げられ、最後は片倉工業という製糸会社の工場として昭和末期まで使用された。実に百年以上、同じ製品を作り続けた工場なのである。
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