本村稚蚕共同飼育所跡

集落を見下ろす山の中腹にあった飼育所の跡。

(群馬県富岡市妙義町下高田)

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丹生の谷から、ひとつ山を越えて、高田川沿いの妙義町の谷へ移動する。この地域は、どちらかといえば前回の碓氷安中の飼育所めぐりで回っておくべき地域だったかもしれない。

その高田川沿いの谷で、最初に見つけた飼育所は、基礎だけが残っていた。山の上に貯桑場への入口が見えている。

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稚蚕飼育所は交通の便のよい場所にある場合が多いのだが、ここは家と家のあいだの狭い路地を入った行き止まりのような場所だ。

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しかも、貯桑場への取り付け道路は鬼のような急斜面。雨の日など軽トラがスリップしそうだ。

ここを車で登るのはかなり勇気がいるのではないか。

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貯桑場へは軽トラを横付けできたようで、桑の搬入作業はやりやすかったろう。

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建物の跡地をみると、小さな室の跡がなく、近くで畑仕事をしていた人に聞いてみてもどうやら大部屋方式棚飼い方式だったようだ。

飼育所が閉鎖されたあと、葬祭会社が花輪などの倉庫にしようとしたが、道が狭くトラックが入れないために実現できず、結局税金がかかるので取り壊すことになったという。

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飼育所の跡には小さな祠が祭られている。天神さまの祠で、3月15日に、近所の4軒が赤飯などを進ぜてお祭りしているという。

祠は飼育所が出来る以前からこの場所にあり、飼育所が運営中は横にどかされていたものが、再び元の位置にもどったのだそうだ。現代ではひとつの産業の寿命はいいところ30年だが、石祠ひとつが百年変わらずに時間を越えていくのをみると、無常を感じずにはいられない。

(2008年06月28日訪問)