羊神社

伝説の人物、羊太夫を祀る神社。

(群馬県安中市中野谷)

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JR磯部駅の南方に広がる台地。旧東横野村のエリアであるため、当サイトでは東横野台地と呼んでいる。

その台地のある集落の中に羊神社という神社があるのだが、近くを通るわりには行ったことがない。せっかくなので立ち寄ってみた。

神社は写真の集落のこんもりとした森のあたりにある。

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神社の廻りは杉林。その周囲は竹林になっている。名前が知れているわりには小さくて地味な神社だった。羊神社に祀られているのは「羊太夫(ひつじだゆう)」という奈良時代初期の伝説の人物。

羊は、朝廷からこの地方の統治を任されていた郡司だった。おそらく当地の豪族だったのではないだろうか。羊の家来に八束脛(やつかはぎ)という超能力者がいて、羊はその男の力で空を飛び、都へ日参していた。あるとき、八束脛が昼寝をしていると、わきの下に羽根が見えた。羊はいたずらでその羽根を抜いてしまった。

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すると八束脛の超能力は失われて、空を飛ぶことができなくなってしまった。当然、都に日参することもできなくなり、朝廷からは謀反の疑いをかけられて、ついには攻め滅ぼされてしまったのだという。これがいわゆる羊太夫の伝説である。

羊は、和銅の元号の由来となった秩父地方の銅鉱脈の発見者だという伝説もあり、実在した人物や事件が伝説として残ったものとも考えられている。

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社殿は切妻造の拝殿と、本殿。本殿は覆屋の中にあるが、内部に春日造りの屋根が見えた。

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境内にあった碑。

ここから約10km東に、多胡碑という有名な古碑がある。その碑の文面を写したものだ。レイアウトは少し違っているが。

文面は、上野国(現在の群馬)の片岡郡、緑野郡、甘良郡から三百戸を羊に与えて多胡郡とする、という朝廷からの命令書の内容である。(拡大写真)この文面にある「羊」という人物が羊太夫とされている。

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絹笠明神の文字碑もあった。

かつてこの地で養蚕が盛んだったことがわかる。

観音山丘陵から磯部へかけての台地には、いまでもまだ養蚕農家を見ることができる。

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境内にはほかに道祖神があった。

(2011年05月08日訪問)