中大塚の稚蚕共同飼育所

壁には「カネボウ蚕種」の文字が残る。

(群馬県藤岡市中大塚)

写真

源性寺から次の目的地へと向かうため、藤岡バイパスに出ようとした道ばたで稚蚕共同飼育所を発見。

「あっ、稚蚕共同飼育所!」と言っただけですぐ意図を理解して車を停めてくれる友人というのは本当にありがたいものである。その友人の奥さんの実家でも稚蚕共同飼育所を倉庫に使っているということで、稚蚕共同飼育所のナンタルカは友人もよく理解しているのだ。

写真

稚蚕共同飼育所とは、稚蚕、すなわち卵から孵ったばかりのカイコの幼虫を大量に飼育するための施設である。養蚕という産業はすでにほとんど消滅しているので、現代において稚蚕共同飼育所といえば産業遺跡に分類される。水車小屋とか、タバコの乾燥小屋などと同じようなものと考えればよい。

基本的な形式は左写真のように軽量鉄骨や補強ブロック造の倉庫ふうで、採光は少なく密閉度の高い建築物である。

写真

その壁には塗り消したはずのかつての広告が再び浮かび上ってきていた。

「カネボウ蚕種」という言葉をGoogleで検索すると1件もヒットしない。それほど人々の関心から消えた商品なのだろう。(このページがインデクシングされれば1件だけヒットすることになるのだろうか…?)

カネボウは平成12年に国内の蚕種事業を終了しており、今はこの広告が歴史を語るだけとなった。

写真

北側にはトイレが併設されている。おそらく稚蚕共同飼育所と同時期に作られ利用されたものだと思う。

飼育所内を清潔に保つため、別棟になっているのだろう。

写真

飼育所の南側。内部は倉庫になっているようだ。シャッターが飼育場にもともとあったものなのか、改築によって取り付けられたものなのかは、まだ私にはわからない。そうした鑑定をするためにはもっとたくさんの稚蚕共同飼育所を見学しなければならないだろう。

地図をみると「吉田建設作業場」と記載されている。

(2005年09月18日訪問)