平井のはさ掛け

街道に沿ったはさ木と、急斜面の畑がある集落。

(岩手県岩泉町大川)

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国道340号線は宮古市方面の峠に向かっていよいよ狭くなっていく。

国道に沿って点々とする小さな集落のひとつが平井だ。その平井集落で見事な“はさ掛け"を見かけた。

左写真のようにわざわざ集落の名前を記した看板を立てているくらいだから、有名なものなのかも知れない。

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これがそのはさ掛け。はさ掛けとは「稲架掛け」と書き、刈り取った稲を天日で乾燥させることを言う。

最近では乾燥機で乾燥させるのが主流だが、米どころなどでは今でも天日で乾燥させることも多く、はさ掛け自体はそれほど珍しいものではない。

ちなみに写真に写っている細い道が国道340号線。

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ここで注目すべきは、はさ掛けをしている柱だ。木製で古びたいい感じを醸し出している。柱には四角いほぞが切ってあって、梁を渡すようになっている。

今回の旅ではこんな柱を他所でも見かけて何だろうと思っていたのだが、はさ木だということがわかった。

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“懐かしい風景"と言うより、どちらかというと“はさ木マニア垂涎のスポット"という雰囲気がただよう。

さらに、左写真のはさ掛けの後ろの畑にも注目! すごい斜度である。豆などが栽培されている。

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斜度のある畑では雨で肥えた土が流れてしまう。耕すときに、流れ落ちた沃土を斜面の上に向かって掻き上げるようにクワを入れる“逆さ耕い(さかさうない)"という過酷な農作業が必要となる畑かも知れない。

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峠を越えると、隣の新里村だ。

はるか下の方に国道とJR岩泉線が見える。

ここから見えている谷の手前のあたりに押角(おしかど)駅という無人駅があるらしい。私は今のところ営業中の鉄道にはあまり関心がないのだが、いつかこの岩泉線を見るためにまたここを訪れることがあるかもしれない。

結局ずいぶん遠回りになってしまったが、とても印象に残った峠越えの道程であった。

(2000年10月06日訪問)