おおくら大仏

(東京都世田谷区)

 

関東が梅雨に入った最初の週末。いつ雨になってもおかしくない空模様の午後に世田谷方面に出かけた。はっきりした目的があったわけではなく、ただひまだったので世田谷区でちょっと気になっていた妙法寺に行ってみることにした。この妙法寺は世田谷通りという幹線道路に接していて、東京都心から町田市方面に向かうと崖の上に大仏が建っているのですぐにわかる。

私は以前東京に住んでいたころ、この近辺の寺々を廻ったことがあるが、その際、時刻が遅かった関係でこの寺は外から眺めただけだった。ところがちょうど先日、世田谷にホタル見物に行った帰りに、この大仏がライトアップされていたのを見かけ写真を撮り、そのことを思い出した。ならば今度は昼間に出かけて、大仏さまをもっと近くで拝もうというわけだ。

世田谷区内で他の寺にも立ち寄ったので、妙法寺に着いたのはもう午後4時過ぎであった。寺に到着し大仏を見上げたとき、私はどこか腑に落ちないものを感じた。なにかが変なのだ‥‥。

下に先日撮影した夜景と、今回昼間撮影した写真を並べてみる。

 

違いに気がつかれただろうか。そう、大仏の向きが変化しているのだ!

もちろん、寺に着いた時は「う〜ん、大仏の向きが先日と違うような気もするけれど、気のせいかな〜。」程度にしか思わなかったのだが‥‥。

この驚愕すべき大仏の構造に気付かぬまま、私はまず本堂へと向かった。

山門は世田谷の古道に面していて、薬医門がある。境内は樹木に覆われた落ち着いた感じ。

 

本堂。寄棟造銅版葺きで木造。本堂の前にはカキツバタの花が飾られていた。

堂宇は他に鎮守社、庫裏、会館、東司など。

本堂の横は庫裏になっている。庫裏は地下1階で、大きく掘り抜かれた地下空間に庭園が造られている。

寺の造りというより、大手結婚式場か都心の高級ホテルのロビーに用いるような金に糸目をつけない感じの造園だ。境内には大きな庭石がふんだんに配され、さすが東京の高級住宅街にふさわしい豪華絢爛さである。

大仏は本堂の裏の墓地のはずれに建っている。青銅製で高さは光背を含めて9mほどか。

この大仏の前に立ったとき、私の疑念は確信に変わった。賽銭箱と大仏の向きが微妙にずれているのである。

常識ではありえないことだが、もはや大仏が回転すると結論する以外になかったのである。

大仏の台座部分をよく見ると、反花(かえりばな)と呼ばれる蓮の花びらが垂れ下がったように見える青銅製の部材と、上框(うわかまち)と呼ばれる八角形の大理石の部材のあいだに僅かなすきまがあるではないか。

おそるおそる蓮台に手をかけて力いっぱい押してみたが、びくともしなかった。

次に大仏の基壇に入ってみる。

大仏の基壇(地下2階)は納骨堂になっている(左写真)。まあそれだけならよくある話だが、この寺の納骨堂はちょっと変わっている。

地下の部屋の中央には大仏の動力部(?)があり、まるでスターウオーズか007の映画に出てくる要塞の動力炉のような雰囲気だ。

さらに円筒の背後には2ヶ所の礼拝所がある。墓石(左写真)の中央には穴が開いており、墓参りにきた人が手前の祭壇でカードを入れると、お骨がベルトコンベアで運ばれてきて、墓石の中央部にセットされるという仕掛けだ。

草むしり不要、雨風に関係なくいつでも墓参りができるというのがこのハイテク霊園の売りなのだそうだ。現在、テレビ電話による遠隔参詣も企画中とのこと。

東光山妙法寺。外から見ると古風な雰囲気を残すこの寺は、実は驚くべきハイテク寺院だったのである。