威光寺

境内の弁天洞窟はぜひローソクの明かりだけで入りたい。

(東京都稲城市矢野口)

3月のまだ薄寒い土曜日。午後から友人と東京都の多摩川方面へ出かける。この地域には紹介すべきスポットは多いのだが、今回立ち寄った場所には何の一貫性もテーマもない。

目的もなく多摩川の崖線に沿ってドライブし、暗くなったらどこかで夕食をとろうというだけの、贅沢な時間の過ごし方である。

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最初の訪問地、威光寺は遊園地・よみうりランドの北西の山麓にある小さな寺だ。境内は本堂、庫裏、放生池、など(駐車場あり)。

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一見すると何の変哲もない寺に見える。

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だが、その境内には弁天洞窟という地下霊場があって、新東京百景にも選ばれている。この弁天洞窟、南関東の地下霊場ではトップレベルのものと言っていい。

私としては、大船の瑜伽洞、二子玉の玉川大師と、ここ弁天洞窟が南関東の三大地下霊場だと思っている。

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庫裏で入洞料を払うと、ロウソクとマッチ、それにロウソク立てのセットを渡される。

洞窟内はこのロウソクの明かりだけで見学するという趣向なのだ。

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洞窟の内部には全く電灯設備がないため、一つ一つの石仏を手で探るように照らしながら進まなければならない。

もし途中で火が消えたら右も左もわからない完全な闇となってしまう。その心細さが強烈な信仰体験となるのである。

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したがって、ここを初めて訪れるときは絶対に懐中電灯など使用してはいけないし、洞内でストロボ撮影するような無粋なことをするべきではない。

弁天洞窟を楽しむために、これだけはぜひ守って頂きたいところである。とにかくだまされたと思って最初の1周はローソクだけで見学して欲しい。

この日は、他に見学者もいない貸し切り状態だったので遠慮なく撮影させてもらったが、写真撮影や懐中電灯の使用は2週目にしよう。

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案内図 ❶ 付近

入口付近。もともとは横穴墓だったらしい。明治のはじめ、奥を掘り進んで洞窟に改造したのだ。正面には宇賀神が祀られている。

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案内図 ❷ 付近

内部は思ったより複雑なので、入口にある案内板をよく頭の中に記憶してから入洞しよう。

十五童子

このあたりまで進むと、入口の光はまったくとどかない。

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案内図 ❸ 付近

十五童子の背後にある大黒天登り口。

ロウソクの明かりで足下ばかり見ていると、上方向の通路に気づかないこともあるので見落とさないように注意しよう!

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十五童子のあたり序盤の見せ場だ。

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このあたりでまだ全体の1/3程度なのだが、すでにかなりの満足度。

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特に、大黒天の穴は進行方向から後ろ向きに開いているのが、とにかくトリッキーでよく考えたと思う。

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案内図 ❹ 付近

「三日月の池」の橋を渡る。橋のたもとの穴から大蛇その1が顔を出す。

ローソクのわずかな光で大蛇を見つけると、びっくりする。

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案内図 ❺ 付近

中央に弁財天。左側に大日如来、右側には毘沙門天。

8の字形の洞窟は、片側の壁だけを見て進むとすべての支洞が見られるという迷路巡回のセオリーをはばむ構造なので、

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案内図 ❻ 付近

洞窟の最深部。最深部8の字になっていて、柱の後ろに廻ることができる。

案内図では「竜神」となっているが、たぶん宇賀神だろう。

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案内図 ❼ 付近

最深部の両部大日如来。

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通路はうねうねと曲がっていて、一気に見通せないようになっていることと、、、

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所々で水面があることがこの洞窟の神秘性をいや増している。

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案内図 ❽ 付近

銭洗いの井戸付近。弘法大師、文殊菩薩などが祀られている抜け道エリア。

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案内図 ❾ 付近

ここには大蛇その2が大きな口を開けている。

一種の磨崖仏ですな。

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出口に戻ってきた。

初めて訪れると面白さのあまり、ローソクが燃え尽きてしまうのかもしれない。

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以前の入洞受付と思われる建物。

ここに常駐して観光客をさばかなければならないほど人が来た時代があったのだろうか。

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境内にはほかに十一面観音がある。

東日本大震災以後、崩落の危険があるということで、入洞ができなくなっているようだ。

(2001年03月10日訪問)